萬年屋六代目蔵元便り

味噌の発酵力 続き

2018年09月15日

前回の続きです。
味噌はなぜ膨らんでしまったのか・・・!

ご存知の通り味噌は発酵食品で、常温保存が可能です。
ただ、常温保存をしていると、
袋詰めした後も熟成し続けています

同じ味噌でも発酵が進むと
色も味も少しずつ変化します。

ちなみに、下の写真は同じ200g入りの味噌ですが、
夏に常温で置いておくと1〜2か月で色が進みます。

味噌の色の変化

袋が膨らむ。。。。

熟成に伴い糀の発酵力とでもいうのでしょうか、
炭酸ガスが出るので、袋が膨らみますが、

商品には何ら問題は有りません。

袋が膨らんだ際は、
すぐに爆発はしませんので(笑)、
袋の空気を抜き、容器等に移してください。

冷蔵庫で保存することにより、
発酵を抑える事も出来ます。

反対に言えば、
麹菌は20度以下では冬眠状態ですので、
冷蔵庫に入れておくと、
ほとんど発酵しないため熟成は進まず、
色も変わりません。

袋が膨らむという事は、
天然醸造で麹菌が活発に動いているが故の事と、
ご理解いただけると幸いです。

今年はこのような味噌の状態になり、
お客様には話をしたり、メモ書きを入れたりして、
お買い上げいただきましたが、

多くのお客様のお宅で袋が膨らんだこともあったと思います。

しかし、この件で一件も苦情がなかったのが
とてもうれしく、心より感謝いたします。
この場を借りてお礼申し上げます。

心を込めて・・・
本当にありがとうございます。

これからも頑張ります!

味噌の発酵力

2018年09月15日

今年の夏は、本当に暑い夏でした。

おかげさまで糀も活発に動いていて、
美味しい味噌が出来そうなのですが、

反面困ったことが起きてしまいました。

それは、味噌の袋が膨らむ!

 発酵中

味噌の袋が膨らんでいるのがわかりますか?
横から見るともっとよくわかります。

糀の活性化

 

この味噌はどこまで膨らむか放っておいたので
極端な例ではありますが、
糀の発酵力が強く、こんな状態になってしまいました。

通常は何年に一度、一樽起こるか起こらないかの現象ですが、
今年は天醸が収まったと思ったら、
今は豊麗が少し膨らむことがあります。

なぜ膨らむか・・・
長くなるので次をご覧ください。

 

 

味噌玉の仕込み 番外編1 <筑波大の研究>

2018年08月18日

味噌玉の研究

サンプリング味噌玉

今年の仕込みのニュースとしては、
筑波大学の菅平研究所から
「味噌玉造りの味噌にどんな菌があるか調べたい」と
ありがたい話がありました。

大学院の学生のOさんが仕込みを手伝いながら、
味噌玉の写真を撮ったり、採取したりしていました。

穴の開いた味噌玉なんて、初めてですよね。
定点カメラもつけて、何時間おきかに一枚ずつ自動で
シャッターが切れるようになっているそうです。

以前に萬年屋では、味噌玉にするとしないとでは、
味噌に含まれる生成菌の数が、

1mg当たり
300個から
66,000個に爆発的に増える

という事だけは調べました。

しかし、どんな菌がいるかまでは
専門的な装置がないと調べられないし、
調べるとしても一個づつ菌を特定していくので、
かなり高額になるときき、やめたそうなので、
(まあ、66,000個も菌がいたらそうなるでしょうね。)
詳しくは調べないでいたのです。

そこへもって、筑波大の話は誠にうれしいことで、
今から結果が楽しみです。

Oさんの予測ですが、
普通は味噌に入ると雑味として嫌われる菌も入っていて、
それが味噌玉特有の深い味になっているのではないかとの事です。

 

 

 

味噌の仕込み 8 <最終:踏み込み>

2018年08月18日

DSC00047

仕込みも最終段階です。

砕いた味噌玉に、糀・塩・水を入れて混合し、
樽に入れて秋まで熟成させます。

この写真の時は、
味噌玉からかなりのアルコール臭が発生し、
お酒に弱い人でしたら、
酔ってしまうほどです。

大豆が発酵しているだけなのに、
アルコールが出るなんて不思議ですね。

「仕事しながら、お酒飲んでいるみたいで
得じゃない♪」
と、言ったところ、

それどころじゃないよ!
塩と糀との割合を間違えない様に、
数を数えながらやっているんだから、
酔っぱらっていたら、仕事にならない!」

と、萬年屋の社長兼職人が言っていました。
それもそうだ!(笑)
失礼しました。ハハハ

#味噌 #踏み込み

 

最後に踏み込みです。

空気が入るとそこからカビが生えるので、
タンク毎に踏み込みます。

子供がやりたがるのですが、
体重が軽すぎて、踏み込みにならず、
これは大人の仕事。

これで土蔵に移して秋から冬にかけて
新味噌の出来上がりです。

美味しい味噌になりますように!!

味噌の仕込み 7 <味噌玉洗い>

2018年08月18日

味噌玉をふやかす  

熟成した味噌玉を洗うために、ふやかしている所

味噌玉を洗って塩と糀と混ぜる時期は、
熟成が進んで、腐敗する手前。
発酵食品は、熟成と腐敗の微妙な兼ね合いですね。

DSC01424

味噌玉の表面と割れ目の中にはカビが生えているので、
そのカビを一つ一つ洗い流します。

昔は一般家庭でも味噌玉で味噌 を作っていたのですが、
その時の話を聞くと、わざわざカビが生えるまで待って、
カビごと仕込んだという話をよく聞きます。

それも家庭の味なのでしょう。
自分の家で作った味噌が一番美味しい!
だから、「手前みそ」という言葉が出来たんですね。

味噌玉を砕く

 

萬年屋では、
かびごと仕込むとかび臭くなるので、

味噌玉を洗ってから仕込みに入ります。

上の写真は、洗った味噌玉を砕くところ。
水色の樽に入っているのは、洗った味噌玉で、
それを機械で砕きます。

3週間熟成させた味噌玉の中央は
まだ柔らかくて、手でつぶせる程ですが、
表面は乾燥して固くなっています。

そうですね、スイカの皮かメロンの皮くらいの固さでしょうか。
機械でないと砕けない固さですね。

自宅で味噌玉を作っていた人は、
どうやってこの固さを砕いたのだろうか・・・と
不思議に思ったので、

お客様の中で、子供のころに自宅で味噌玉を作っていた方に聞いたところ、
石臼で引いたとか、集落の誰かが砕く機械を持っていたとか。

やはり、人の手で砕くには固すぎますよね。
こういう事を聞けるお客様も高齢の方が多く、

しかも、子供のころに手伝っただけだから、
詳しいことは覚えていないという方ばかりで、
いずれは聞けなくなってしまいますね。

味噌玉造りという味噌の仕込み方は、
本当に消えかけている味なのだなぁと
実感した次第です。

わかる方がいるうちに、聞いておきたいものです。

 

味噌玉の仕込み 6 <熟成>

2018年08月18日

味噌玉 熟成中   味噌玉 熟成中

 

2週間ほど熟成させた味噌玉です。

蒸し大豆をつぶしただけなのに、こんな泡みたいのが出てきます。

これが、「あめ」と呼ばれるもので、
熟成が進んでいる証拠です。
あめと言っても甘くはなく、

どちらかというと、
腐った牛乳の様な、
ブルーチーズの強烈な香りの様な・・・

そういえば、牛乳が発酵するとヨーグルトになるのときには、
こんな香りになるのかなあと思いながら、
毎年味噌玉を見ています。

また、萬年屋の味噌には
この時点で蔵に住み着いた菌が
味噌玉に付着?発生?します。

だから、あめにはチーズ系の香りがするようになるのでしょうか?!

この「あめ」が出てくるころになると、
味噌玉もアルコールの様な香りがしてきます。

ただ、つぶした大豆を発酵させているだけなのに、
春の連休前、このほんのわずかなこの季節だけ

腐らずに熟成だけする。
先人の知恵ってすごいと思います。

味噌玉の仕込み 5 <味噌玉並べ>

2018年08月18日

釜から出して1個2升に切り分けた味噌玉は、
半分の1升分にして風通しの良い場所へ並べます。

切り分けるのには包丁ではなく、ステンレス製の薄い板を使うのですよ。
目分量で半分にしていくのですが、
気を許すと曲がって切ってしまいますので、慎重にね・・・!

味噌玉

 味噌玉は工場の蔵の中に並べていきます。

風通しが良いように、
等間隔に隙間を開けながら、
倒れないように並べます。

並べる台は角材に横板を渡し、その上に竹のすのこをひいて
この上に乗りながら並べます。

竹すのこがおれない様に、角材の部分のみに乗り、
横板には体重をかけない様に!

乗ってもしなるので多少は大丈夫ですが、
所々虫食いで傷んでいる部分もあり、
そこに乗ると、竹すのこが折れます。

ロシアンルーレットみたいでスリルあり!
な〜んてね。

ここからは←まちがい
ここから、子供達の活躍する場面です。
なにせ大人より小さくて身軽なので、
竹すのこの上で軽快な動きです。

 味噌玉の熟成

大人は天井に頭がつかえるのですが、

子供は背が小さいので、立っても大丈夫。

高い所に上りたがるのは、まるでおサルさんかしら?
何とかは高い所が好きというのが、あてはまるのでしょう(笑)

味噌屋は知力よりも体力!
家業を手伝うのには、もってこいです!

 

味噌玉 並べ    味噌玉 並べ

 

 

 

 

 

味噌玉の仕込み 4 <酪酸菌入り味噌>

2018年08月02日

酪酸菌入り味噌

萬年屋の味噌玉造りの味噌は、今話題の酪酸菌が入っています。
未来世紀ジパングの取材のカギになったのも、
酪酸菌入りの味噌だからという事もあります。

萬年屋の味噌蔵にたくさんの菌が住み着いていて、
その中の一つが酪酸菌です。

味噌に酪酸菌が入っているというのは非常に珍しく、
お客様には
「チーズの様な風味がする」

といわれることも多いです。

現在の一般的な信州味噌は、
大豆を煮たら同時に塩・糀・水を入れて熟成させますが、
味噌玉にするという事は、
塩を入れないで大豆だけで熟成させ、その後で塩を入れるので、
酵素が爆発的に増えるのです。

ちなみに生成菌の数は
味噌玉にしない「天醸」は1mgあたり300
味噌玉にすると66,000です。

全く同じ原料を使って仕込んでも、この菌数の違いが味の違いになります。

何度も書いていて、耳にタコが出来ましたか?!
あ、読んでいるので目にタコかしら(笑)

話を元に戻して・・・

塩を入れるという事は、
塩は殺菌作用があるので、
塩よりも強い菌(酵素)しか繁殖しないのですが、

味噌玉にして大豆だけで熟成させるので
酵素がたくさん含まれるようになるのです。

ある意味、塩ってすごい消毒作用がありますよね。

いつ頃、酪酸菌が萬年屋の蔵に住み着いたのかは
わかりませんが、

萬年屋でも味噌玉にしない
「天醸」には酪酸臭はしないので、
酪酸菌は塩には弱いという事でしょうか。

やはり大豆だけで熟成させるというのが、
酪酸菌入り味噌が出来るカギですね。

私もなぜ今酪酸菌が注目されているのか、
「腸内細菌として良い菌だ」
という程度しか知らなかったので、
簡単に調べてみました。

結果は次回のブログをご覧ください。

 酪酸菌入り味噌

酪酸菌ほかいろいろな酵素が繁殖中の味噌玉(煮大豆)です。
プチプチ音を立てているときに、
酵素が産まれているんですね〜。なんか神秘的!

味噌玉の仕込み 3 <味噌玉 成形>

2018年07月07日

 今年の仕込みのアルバイトは信州大学の学生さん。
細身のわりに筋肉質で気が利いてよく働いてくれました。

味噌玉 大豆

写真は釜の下から大豆を出している所。
シャベルで掻き出してチョッパー(ミキサー)に入れると、大豆がつぶれて出てきます。
子供たちはこの釜の中に入って、取り出せないところを手前に押しやっているのです。
左端でつぶした大豆を切っている様子がわかりますか?

味噌玉仕込み

つぶした大豆を切り、味噌玉に成形している様子。
1080キロの大豆を180個に目分量で切り分けます。職人のカンというやつです!
すると、一玉6kg=2升 になります。

味噌玉 成形

切った味噌玉を並べる作業です。
見た目は楽そうでも、一玉6キロで中腰で並べていくので、
180個並べ終わるころには、腰が痛くなりますね。

 

今年の仕込みの特徴と言えば、テレビの撮影があった事ですね。
テレビの撮影をしたいという話は、過去に何回もあったのですが、
なにせ、期間が限られているので、日程が合わずに撮影されなかったのですが、
今年はなんと2回も撮影&放映!当たり年です。

アルバイトの学生さん達とも、テレビにも映るね〜なんて言っていたら、
一番奥で大豆の釜出しをしていて、チラッとしか映らずに、
残念がっていました。

アルバイト中も何をやるにも元気良くて、
楽しそうに仕事をしてくれて、こちらまで元気をもらいました。

元気が良いという事は、良いことだ!!

 

味噌玉の仕込み 2 <豆煮>

2018年07月06日

味噌の仕込みの様子です。これは3月の後半の仕事。
子供たちは春休みなので、毎年お手伝いです。
大豆を煮る

まずは大豆を煮ます。煮るといっても、蒸すのですが。
蒸した方が、大豆の旨味が外に出ないというからだそうです。

一度に1080kg。娘が入っていると釜の大きさがわかるかと。
釜出しする釜の中はかなり熱く、まるでサウナか蒸し風呂か。

100度の蒸気が上がっていた釜の中に入る力仕事なので、そこそこ重労働です。
もちろん、釜の内側は熱いので、なるべく触らない様にしています。

柔らかくなるまで蒸した大豆は、触ると熱くて持てない程。
蒸しあがった大豆をちょっとつまみ食い♪ 仕込みの時の楽しみです。
ふうふうと冷まして食べると、美味しいですよ。

ダイエットしたい方は、ぜひぜひお手伝いに来てください。来年の春ね。
アルバイト料をもらって、痩せられますよ〜

ちなみに、私もこの作業をしていましたが、
最近は子供が釜の中に入りたくて、交代でやりたがる作業です。
楽をしているのは私とアルバイト。
子供にとっては、あの大きな釜に入るというのが
非日常なのでしょうね。