萬年屋六代目蔵元便り
味噌の仕込み -仕込-
仕込も最終段階
砕いた味噌玉を糀・塩・水と混ぜてタンクに仕込みます。
この時に大切になるのが、
味噌玉が1つ1升である事ですね。
適当な大きさに切っていると、仕込の分量がめちゃくちゃになります。
味噌玉をきった時に、誤差はあるものの、1つ1升にしておくのが
大前提になります。
10割糀だと、
味噌玉1個(1升)に対し、糀1升分
一掻き15個なので、糀は15升(15枚)
これを15枚糀の味噌と言ってます。
(室ぶたでいうと15枚糀。室ぶた1枚=1升)になります。
8割糀だと、12枚糀 15×0.8=12
6割糀だと9枚糀 15×0.6=9
わかりますか?
私、算数が苦手だったので、
嫁いだときに、15枚だの9枚だの言われ
この計算式を説明されたのですが、
暗算が出来ず
何が何だかわからずじまいで、
15枚は豊麗、
9枚は秘蔵(本店のみ販売)
と、暗記してました。。。
聞きそびれて、理解できたのは
随分と日が経ってからでした。
算数レベルなのに、情けなくなりますね・・・(苦笑)
味噌の仕込み -工場の風景-
工場の様子はこんな感じです。
1人が味噌玉を洗い、
1人が味噌玉を砕き、
1人が味噌玉を隣の工場に運んで行きます。
要所要所で機械を入れているので、
少人数でも仕込が出来るようになってます。
おじいちゃん(先代の社長)が考えて、
戦後から高度成長期に機械を入れたそうです。
戦後の萬年屋の話を聞くと、
おじいちゃんの功績がなかなかすごいですね。
仕込を機械化したのもそうだし、
味噌玉を復活させたのも、おじいちゃん。
萬年屋のお取り寄せ味噌の7割が、この味噌玉の味噌なんです。
一度食べると癖になる、そんな味噌ですね。
今、萬年屋が細々とでも残っているのは、
その当時におじいちゃんの考えた未来像に
近いものではないかなぁと思います。(嫁の私が考えるに・・・)
さあ、私も次の世代に繋げられるように、
無い知恵を絞りださなくてと思うものの、
絞っても絞っても出ない!
困ったものです(苦笑)
こりゃ、たまらんな!(^O^)
味噌の仕込み -砕く-
味噌玉を洗い終わったら、砕きます。
写真左(青い樽の中)にあるのが、洗った味噌玉。
砕くと粒状になって出てきます(黄色の樽の中)。
この砕く機械をチョッパーと言います。
うちのチョッパーはものすごい年代もので、
かるく半世紀以上使っています。
シャフトが少し曲がっているようで、
味噌玉を入れないと、ガッシャンガッシャン音を立てるのですが、
これがなかなか壊れない代物です。
馬力もかなり強く、カチコチの味噌玉も
難なく砕いていくところが力強い!!
ダンプカーみたいな感じですね。
そして新しく買ったチョッパーの方が壊れやすく、
何故なのかメーカーの人に聞いたところ、
昔のは鉄で作った上に、単純な機械だから頑丈だそうです。
まあ、うちみたいに半世紀も使ってれば、
メーカーも上がったりですよね。
ある程度壊れてくれないと、次に繋がらない(笑)
話がだいぶそれてしまいました。すみません。
教訓:
昔の機械は大切に使いましょう!!
味噌の仕込み -味噌玉洗い-
熟成した味噌玉を今度は洗います。
3週間近く熟成させた味噌玉は、カチカチに固まっているので、
タンクに水を張り、その中でふやかします。
それを今度は写真の様に一つ一つ洗っていきます。
何故洗うかって・・・
そのまま仕込むと、表面のかびも一緒に仕込んでしまい、
かび臭くなるからです。
味噌屋によってはカビごと仕込み、それも含めて
味噌の味としているお店もありますが、
萬年屋は一つ一つ洗ってから仕込みます。
タンクから1つとって、
たわしでこすって、きれいな水で洗って、
また、1つとって、
たわしでこすって、きれいな水で洗って・・・
ひたすら味噌玉を洗います。
単純作業で、毎日これを繰り返すんですよ。
味噌の仕込み -熟成中-
味噌玉が熟成されると、「あめ」と呼ばれる泡が出てきます。
シーンとしたところで、耳を澄ませると、本当にプチプチと音を立てながら、
あめが出てくるのです。
ただ、煮て潰しただけの大豆が、熟成する時には、
音を立てて美味しく成長しているのが、わかります。
食べ物って神秘ですよね。
ちょっと見た目には、グロテスクですが。
これを食べようと思った昔の人の勇気に乾杯です!
あめとはいえ、全く甘くなく、
熟成と腐敗の真ん中の様な味です。
決して美味しいものではありません。
何故あめというのでしょうかね(笑)
テレビ放映されます NHK 趣味どきっ!
フェイスブックではお知らせしたのですが、先月、NHKの「趣味どきっ!」取材がありました。
放送は
第1回目 Eテレ 6/ 5(月) Eテレ 21:30〜21:55
再放送: 6/ 7(水) NHK総合 10:15〜10:40
6/12(月) Eテレ 11:30〜11:55
第2回目 Eテレ 6/ 12(月) Eテレ 21:30〜21:55
再放送: 6/14(水) NHK総合 10:15〜10:40
6/19(月) Eテレ 11:30〜11:55
とよた真帆さんと羽場裕一さんがご来店され、庭の土塁と工場もご覧になっていかれました。
とよた真帆さんはとてもきれいな方だし、羽場裕一さんは気さくに話しかけてくれました。
趣味どきっ❗のテキストはこちらです。
味噌の仕込み -なぜ味噌玉にするの?!-
味噌玉にするのはなぜ?!
前回、大切な事を書き忘れていました。
通常、味噌は、大豆を煮たところに、麹・塩・水を混ぜてその場で仕込みます。
それが煮大豆を潰して玉状にした後は、塩や麹は混ぜずに、
玉状にして熟成させることで、
嫌塩性の菌・酵母・酵素というものが、中に取り込まれるからです。
その数普通の味噌の200倍とも言われています。
塩は元々、殺菌作用がありますよね。
塩を入れない事で、菌や酵母などが大豆に入り込むのです。
また、味噌玉にするのには、春しか仕込みが出来ないのも
大きな特徴です。
GWが過ぎ、初夏を過ぎると味噌玉は熟成する前に腐ってしまいます。
(塩も何も入っていない、ただの潰した大豆の塊ですので!)
また、秋〜冬に仕込むと熟成する前に乾燥してしまい、
堅い大豆の塊のままなのです。
春の気候は腐敗もせず、乾燥もしないで、熟成が進んでいく・・・
味噌玉にするには春の仕込みなのですね。
春に仕込み、夏の暑さを越すと、秋に味噌になる。
気候に合わせて仕込む、天然醸造の造り方です。
そもそも、味噌玉造りというのは、飛鳥時代(奈良時代以前)の作り方です。
先人の知恵が詰まっているのだなぁと思います。
昔の人は科学的な事は分かっていないのに、
感覚で造っていたのか、失敗を重ねながら造ったのか、
はたまた偶然か重なって、こういう仕込み方法が生まれたのか。
歴史があると言う事は、それだけですごい事ですね。
味噌の仕込み -味噌玉並べ-
味噌玉を棚に並べて熟成させます。
7個×9列 風通しの良い様に、隙間を作って並べていきます。
4段目にもなると、天井に頭が付くくらい高い所まで並べる様になります。
子供ですら、左の写真の状態・・・。
大人は4段目に乗っていると、途中で必ず頭を打って
目から★星が飛び出るほど、痛い思いをするんですよ。
なるべくなら、4段目は安定もいまいちだし、
大人は避けたいところなのですが、
子供は4段目に乗りたくって仕方ない。
なんとかは高い所が好きとも申しますので、
その系統なんでしょう、我が家は(笑)
味噌屋をやるには学力いらぬ、味噌を造る体力あれば良い
by 母
二人で争って4段目。
これじゃあ、アルバイト料10分10円は割に合わないかな。
大人の仕事を奪ってまで並べていました。
あとで何か別のご褒美をあげましょう〜。と、そのころ考えてました。
味噌の仕込み -味噌玉の数-
釜から出した味噌玉。
手前のが大豆2升分。
ステンレスの板で半分に切って、大豆1升分にします。
そうそう、前回説明していなかったので、玉の数の事をご説明します。
一釜1080kgの大豆を
1個が大豆2升になるように、180個に切り分けます。
誤差はプラスマイナス10個以内。
味噌玉1個2升にしないと、その後の糀・塩・水の分量が狂うからです。
切るのは主人なのですが、
私は横から、
「なんだか巨大な味噌玉じゃない?!」とか、
「気持ち、小さい気がする」とか、気楽な事を言っています。
切っている本人曰く、
「言うのは簡単だけど、なかなか大変なんだよ・・・!」
1センチ違うと、10個以上の狂いが出てくる計算だそうです。
それはそれは、失礼しました。
味噌の仕込み -言い訳-
GW連休前に仕込の様子をアップしなくては・・・と思っているうちに、
GW前はの商品を作り(うちは製造元でもあるので、作らなくては売れない・・・)
GWが始まると、本店と支店の店番に加え、追加の味噌詰め、
先週は売り糀の仕込み・・・
仕込の記事?を書くのには時間が足りないので、
途中に、ごまかしで味噌のレシピを公開。
箸よりも重いものを持てない私は(←誰も信用しないけど)
3月からの仕込の重労働の疲れがどっと出て、
子供から風邪をもらいダウンしてました。
気を取り直して、仕込の続きから書きます(苦笑)